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おいしい食卓
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残暑お見舞い申し上げます*
暦は立秋。
今週はまた暑さが厳しいですね。
少々季節外れな?シチューの鍋を弱火にかけながら、春から配合を何度か試している試作が膨らんでいるところです。


きのうは数ヵ月ぶりに、ホームにいる伯父に会いに行きました。
伯父は、1日おきに見舞いに来ている伯母と、カフェテリアでメロンを食べていました。
小さく剥いていった梨を差し出しながら、オーチャンパパ、葉子だよ〜と挨拶をすると、伯父はパッと目を開いて、言葉は発しないのだけど、じーっと長く私のことを見つめていました。
前に来たときよりも、症状はずっと進んでいると聞いていたので、でも書いてきた残暑見舞いのカードを読んだり、最近整理したアルバムの写真のことや、夏休みに毎年一緒に出掛けていた海や民宿でのことなんかを、話しました。

オーチャンパパ、というのは、私の家族だけが呼んでいた伯父の愛称です。
他の人が呼ばないその呼び名に、もうほんのりとしかない伯父の記憶が、すこうしだけ、揺れているように見えました。

伯父は会社勤めの人でしたが、若いころにスナックみたいな店をしていたのだそうで、調理師免許を持っていて、とてもとても料理が上手な人でした。
包丁はいつもピカピカ、鋭く薄く研いである包丁を使って台所に立つ後ろ姿。
すっかりお任せしてこちらがわいわいやっている途中、時々こっそり覗いてみたっけなー。
GWや夏休みに毎年遊びに行った房総の海で、釣りが大好きな伯父と、父や姉弟と一緒に、わたしも釣りをしました。
白キスやメゴチなんかを沢山釣って民宿に戻ると、伯父は民宿の台所に直行、夕食の支度がはじまります。
とれたてを美しく盛りつけたお造りやあげたてのキスの天ぷらが、テーブルに並びきれないほど並び、本当に美味しかった‥。
魚は私達だけでは食べきれないほどだったから、いつも民宿の方や他のお客さんたちのぶんまで料理をしたり、民宿のおかみさんの手に余る大きな魚があると民宿の人が呼びに来て、また台所にさばきに行ったり‥。
人にあたたかく、とても優しい人でした。
私が泣いていると、いつも必ずかばってくれました。
キスの天ぷらが大好物な私はあの魚の食卓の思い出ばかりだったのですが、姉は、ビーフシチューが美味しかった〜と言っていたので、伯母に作り方知っている?と尋ねてみました。
買い出しから仕込みからいつも伯父一人だけで作っていたのだそうで、伯母はわからないと言いました。
ただ、缶詰めのルーだとか市販の材料は一切使わない人で、何日もかけて作っていたよと話してくれました。

いま言葉をほとんど話さない伯父がこちらをじーっと見つめていて、伯父の目は、呼び名には微かな記憶があるのに、私を思い出せずに、悲しくなっているような気がしました。


帰り道、スーパーに立ち寄ってシチューの材料を選んでいると、7月から中座していたお菓子の続きが浮かんできました。
伯父が私にくれた、優しくおいしい記憶のおかげかなと想いました。
わたし達が帰ったあとに伯父が、今日は本当に良かったと、それから、ようこ、と言っていたよと、夜に伯母が電話をくれました。
by trespetits | 2011-08-09 16:40 | お知らせ
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